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システムトレード

新興銘柄全体のトレンド判定

新興銘柄とひと括りに言っても、たとえばマザーズ指数とJASDAQ指数では、ボラティリティの大きさも違えば、トレンドの美しさも違います。バイオをはじめとする激しく乱高下しがちな銘柄群はマザーズに属しているケースが多いため、特にボラティリティについては恒常的にマザーズの方がJASDAQよりも大きくなる傾向があります。従って、ボラティリティブレイクアウトの判断においても、マザーズとJASDAQでは当然ながら別の基準を用いる必要があります。

このように同じ新興銘柄とは言っても、マザーズとJASDAQでは全く別物のような動きをします。個人に選好されやすい新興銘柄ですが、マザーズ銘柄しかトレードしない、あるいはJASDAQ銘柄しかトレードしないというポリシーでもあれば別ですが、もし新興銘柄全体を幅広にトレードするのであれば、全体トレンド判定のためには、必ず両指数ともに目配りをする必要があるということになります。

念の為ですが、同じ指数を構成する銘柄と言えど、各個別銘柄の動きは全く別物です。マザーズの中にもJASDAQ指数よりもボラが小さいものもあれば、JASDAQの中にもマザーズ指数よりボラが大きいものが幾らでもあります。

要するに、指数によってボラは大きく違うし、ましてや個別銘柄については、それぞれ全くボラが異なるということです。それ故、たとえばボラティリティブレイクアウトを利用したシステムを作る場合、全ての指数や全ての銘柄に通用する魔法のようなものは絶対に作ることが出来ません。逆に言えば、ボラティリティブレイクアウトのシステムは、各指数・各個別銘柄ごとに作る必要があります。

トレーディングシステムに疎い方のために補足しておきますが、実はシステムトレーダーにとっては永遠の課題というべきものがあります。「カーブフィッティング(過剰最適化)の罠」と呼ばれるものです。これについては、下記のブログ記事で簡潔に解説されており参考になるでしょう。

http://earlgrey.s8.xrea.com/ts-cf.html

カーブフィッティングの罠に陥ることなく優れたシステムを作ることは、実際問題として、システムトレード入門者がすぐに達成できるような容易なことでは全くありません。とは言え、新興銘柄全体のトレンド判定が出来る程度のものということであれば、(人によりますが)比較的早い段階で作成できるのではないかと思っています。

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相場雑感

ロビンフッドの大冒険

いまトレーダーの間で注目度が日増しに上がっているのがロビンフッドです。ただし、ロビンフッドと言っても昔日本でもアニメ化され人気となったアレキサンドル・デュマの作品のことではなく、米国の証券会社のことです。

https://robinhood.com/us/en/

ロビンフッドは、株だけでなく仮想通貨も扱っています。そして、スマホから簡単にトレード出来る上に取引手数料ゼロということでトレーダーの人気を集め、急速に勢力を拡大させてきました。そして、あまりの人気のため度々システムダウンを起こしたり訴訟沙汰にまでなったりと、よくも悪くも今や米国で最も注目される証券会社となりました。

ロビンフッドを使って株を売買する人々は「ロビンフッダー」と呼ばれます。ロビンフッダーの中にはベテランや上級者が全くいないというわけではありません。しかし、日本と同様に米国でもコロナ禍により時間を持て余したのに加え給付金を得たことでトレードを始めた人々は多く、また彼らの殆どがロビンフッドで売買しているため、「米国の株初心者=ロビンフッダー」というイメージが非常に強くなっています。

そんなロビンフッダーの動向ですが、日本では、村越誠氏が最も詳細な分析を行っていますので、是非参考にされてください。

http://muragoe-makoto.blog.jp/archives/82319432.html

言うまでもないことですが、日本株は日々、米国市場の動向次第で上にも下にも大きく揺さぶられる運命から逃れられません。従って、ロビンフッダーの動向は、日本株を売買する私達にとっても全くもって無縁なものではないのです。

著書の中で私は、「恐れを知らないがゆえに上げ相場で一番儲かるのは初心者である一方、下げ相場で一番損をするのもまた初心者」と書きました。ロビンフッダーの快進撃によるコロナショック後の暴騰相場は、その前半部分を見事に裏書きした形になりました。そして、時期は分からないものの何れは必ずやってくる下げ相場を果たしてロビンフッダーが上手く切り抜けられるのか、大いに注目していきたいと思います。

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『順張りスイングトレードの極意』執筆裏話

縁あって今回初の著書を世に出すことになったわけですが、実はそれまでに様々な偶然が重なっていました。今日は、そんな出版までの裏話を少し書くことにします。

既に手に取られた方はお気づきでしょうが、私の著書のそでには、デイトレーダーのRょーへーさんによる(私のとは好対照のタイトルの)「初心者にもできる逆張りデイトレードの極意」の宣伝が入っています。

親子ほどではないにしろかなり歳の離れた弟のようなRさんとは、人生観・嗜好・性格等々が非常に似ていて、何故か3年前の初対面からすぐに意気投合。以来、ずっと親しく、また非常に生産的な関係を構築してきました。

そんなRさんのブログ等の活動が彩流社の編集者さんの目にたまたま留まったのを切っ掛けに上記著書が上梓されたのは昨年12月。たちまちスマッシュヒットとなり、Amazonでは発売直後に売り切れになるほどの人気本となりました。

そして、その編集者さんからRさんに新たな書き手の紹介依頼があり、結果的に私にお鉢が回ってきたというのがそもそもの始まりで、何れは一度本を書いてみたいと漠然と考えていた私としては、そのお話を二つ返事でお引き受けしたというわけです。Rさんが得意とするのが逆張りデイトレード、また私が得意とするのが順張りスイングトレードというのも、偶然ながら非常によい組み合わせだったと思います。

その後、今年1月半ばから本格的に執筆に取り掛かり、今年3月28日に書き終えました。(多少の手直しがあったため、最終稿が完成したのは4月でした。)ということで、執筆期間は、コロナショックの暴落の初めから終わりまでの間と完全に重なることになったのです。

実はその間、体調的には生涯最悪と言って過言ではないほどの状況でした。冗談抜きで遺書になるかとすら思ったため、体調悪化と闘いながらも執筆に励みました。そして、幸いこうして生かされ、また可愛い我が子同様の著書を世に出せることになったのです。

歴史に残るウイルス禍と暴落相場の真っ只中、更に自身の悪化する体調とも闘う中で執筆作業を進めることになったのは、常々リスク管理の大切さを強調している私にとっては奇貨であったと言えます。単なる「べき論」ではなく現在進行形でリスクと向き合いつつそれに対処する術を伝授でき、筆に魂を込められることになったと考えるからです。

「まえがき」は本全体のトーンを決める重要な部分ということもあり、実は1月半ばの段階で書き終えていました。しかし、その後事態が急速な展開を示す中、結果的に最初に書いた「まえがき」は全面書き換え。比較的穏やかだったそれは緊迫感溢れるものへと一変しました。文字通り、臨機応変の対応が出来たかと思います。

このように我が初の著書は、色々な偶然に偶然が重なって世に問うこととなりました。それが読者の皆さんにとって常に手元に置いて何度でも読み返すような存在になったなら、著者としてこれ以上嬉しいことはありません。