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相場雑感

経験が足枷となる相場

著書の「はじめに」において私は、「常識では到底理解できないことが起こった時、経験は逆に足枷となる」と書きました。

率直に言って、コロナショックの大暴落も、またその後に起こり現在進行中の大反騰(コロナバブル?)も、正に常識では到底理解できないことが起こった形であり、多くのベテラン勢がその両方の局面で苦しめられることになりました。この大反騰に関して言えば、今ひとつ乗り切れていないというのはまだ良い方で、空売りで数千万や数億レベルの大やけどをしたベテランも決して少なくはないように見受けられます。

実際、私の経験の中でも、これほどまでに実体経済の急激な落ち込みと株価の急速な上昇が同時に起こったのは初めてです。景気悪化どころかこれからどうして暮らしていくのか途方に暮れる人々が大量に出ているような状況にあって、未曾有の金融緩和による過剰流動性という背景があるにせよ、株価のみが我関せずとばかり無限に上昇していくのには強い違和感があります。(トレンドフォロワーなので、違和感があろうがなかろうが値動きにはついていくだけですが。)

その一方、コロナショックの大暴落を見て株式市場に参入してきた初心者の方々は幸運でした。3月中旬以降何でもかんでも上がるという稀有な上昇局面に、ベストタイミングで参加することに結果としてなったからです。当然ながら、たとえ知識としてはあったにせよ空売りを実践した方はほぼいなかったはずで、この天国相場の恩恵をフルに受けることが出来たことでしょう。「上げ相場で一番儲かるのは初心者」とも私は著書に書きましたが、いま正に、恐れを知らない初心者の皆さんが破竹の勢いで進撃中という状況になっています。

これからの相場がどうなるか? そんなことは誰にも分かりません。ただ一つ確実に言えるのは、永遠に下がり続ける相場もなければ永遠に上がり続ける相場もないということ。コロナショックという未曾有の暴落相場が早くも3月で終了して「守りの相場」が「攻めの相場」に急転換したように、その時期はともかく、何れ必ず「守りの相場」がやってくるということです。

著書の最初の方では、敢えて徹底して「守り」の重要性について強調しておきました。今年から相場を始めて見事にスタートダッシュを決めることが出来た初心者の方々には特に、「守りの相場」へと切り替わる前に、是非その真意を掴み取り備えをしておいていただきたいものです。

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システムトレード

トレンド判定法

著書に記した通り、私はATRベースのボラティリティブレイクアウトを使って、トレンドの判定をしています。

しかし、自作システムのトレンド判定が百発百中であるはずもありません。時に早すぎたり、逆に遅すぎたり、あるいは完全なダマシとなることもあります。

それを避けるための一工夫として、実は二つのシステムを併用しています。どちらも同じATRベースのボラティリティブレイクアウトではあるのですが、一つは敏感なシステム、すなわち早めにサインが出るようなものにし、もう一つは逆に鈍感なシステムにしています。

これは、トレンドの判定をする「審判員」が二人いるようなものです。スポーツの審判員の場合でも、一人ではどうしても誤審が出やすくなりますが、複数の人が判定し、また必要なら協議をするようにすれば、必然的に判定の精度も高まることになります。

実際の運用ですが、たとえば上昇トレンド継続中に買いで攻めている場合、二つのシステムが揃って上昇と判断しているうちは強気で行き、判定が分かれた際には、ある程度利食いを進めて建玉を減らし、最終的に二つのシステムが揃って下落と判断した際には、全て利食いをする(更にはドテンしてショートすることもある)というわけです。

トレードシステムを作ろうとする人は、一つの「究極のシステム」を作ろうとするケースが殆どであると思います。その気持自体は非常によく理解できるし、私自身、そのような極めて精度の高いシステムが出来たらどんなに素晴らしいかと思いますが、言うまでもなく、なかなかそのような理想的なものなど出来ません。そこで私は、システムが間違うことを前提として、複数のシステムで互いを補完し合うようにしているのです。

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トレード戦略

強いものは売らない

個人的にどのような強気相場であっても完全に買いに傾けることはなく、逆にいかなる暴落相場であっても完全に売りに傾けることはしません。いわゆるロング・ショート戦略です。

トレンドフォロワーにとって自らが乗っかっているトレンドに反するポジションを多少なりとも持つことの効用は沢山あります。中でも最大の効用は、自身の(全体相場に対する)相場観が絶対正しいとの「確証バイアス」に陥ることなく、常に冷静かつ客観的に相場を見られるということです。

新興銘柄をスイングトレードする場合、新興の貸借銘柄は非常に少ないため、ショート側の対象となる銘柄は限られます。そうなると、どうしてもマザーズ指数先物が最も分かりやすい候補になるし、私自身もそれをショートしてロング・ショートを組むのを基本としています。

しかし、ひとつ問題があります。それは、現在のようにアンジェスを筆頭とするバイオ銘柄群に資金が集中する時には、マザーズ指数こそが最強となってしまい、強烈な踏み上げを喰らう可能性があるということです。

2018年11月から2019年1月にかけてはサンバイオが暴騰し、マザーズ指数は正に「サンバイオ指数」と化し、強烈な上昇を示しました。マザーズ指数をショートすることでロング・ショートを組んでいるトレーダーにとっては災難とも言える事態で、鮮明に覚えている人も多いことでしょう。

要するに、マザーズ指数先物はロング・ショートのショート側の対象として便利ではあるものの、時にあたかも仕手株のような動きを見せ大きく踏み上げられる可能性があることには十分な注意が必要ということになります。

そうした災難を避けるため、トレンドフォロワーとしてはやはりシステムを援用し、上方向へのボラティリティブレイクアウトが発生すれば白旗を揚げるようにしています。その際の代替のショート候補としては、選択肢は限られる上に選別自体もなかなか難しいものの「下げトレンドにある個別銘柄」となります。そして、マザーズ指数先物は下方へのボラティリティブレイクアウトが確認できるまで封印、ということになります。

強いものしか買わず、弱いものしか売らない。トレンドフォロワーはそれを徹底するのみなのです。