ドテンの効用

世間一般の常識と相場における常識が対立することは少なくありませんが、たとえば「手のひら返し」などはその好例と言えそうです。それは世間的にはネガティブな印象を与える言葉であり、ツイッターなどを見ていると、投資家やトレーダーも「また手のひら返しかよ」などと揶揄されていたりします。しかし、長期投資家であればともかく、短期で結果を出していかなければならないトレーダーの場合、意固地になって見方を変えないことほど危険な習性はありません。

そもそもの話として、自分が取ったポジションが順行しない限り、トレーダーは利益を出すことが出来ません。そして、逆行が進めば進むほど損失は膨らんでいくことになります。それを見て、「俺が正しくてマーケットが間違っている」などと叫んだとて、周りから笑われるだけでしょう。

確かに損切りは精神的に苦しいものです。またそれが苦しいことだからこそ、人は本能的に損失の確定を先延ばしにし、いつか利益になることを祈ってしまうわけです。しかしながら、逆行が続くのは、それはそれで精神的に苦しいものであるのも事実。結局、本当に合理的な人であれば、(同じように苦しいのなら)苦しみの時間は短ければ短いほどよい、と考えることでしょう。

相場における「手のひら返し」の典型は「ドテン」です。

※ちなみに英語では、「ドテン」のことを「SAR(= Stop And Reverse)」と呼びます。

順張りを旨とするスイングトレーダーとして、個人的にシステムトレードにおいては、買いから売り、売りから買いへと「ドテン」するストラテジー作りをメインにしてきました。(ボラティリティブレイクアウトに限らずブレイクアウト系は総じて、ドテンを基本としています。)

さて、「ドテン」の効用の最たるものは、買いか売りかの二者択一で曖昧さがないところでしょう。常にポジションを持つことにはなりますが、逆行したポジションは「手のひら返し」によって直ちに切ってしまうため、損失が膨らむのに耐えるような「苦しい時間」が全くありません。そんなわけで、不要な感情を排しマシーンに徹する上では「ドテン」こそが最高の仕組みとなるのです。

尤も、順張りでドテンするストラテジーは、トレンドの出ないレンジ相場においては、(小さいものではありますが)損失を繰り返すことになります。しかし、いざトレンドが出た際には、大きく勝てることになります。正に損小利大を地で行くものなのです。

念の為に補足しておくと、拙著の中では「頭の切り替え」という言葉を多用しているのですが、これは「手のひら返し」と同じ意味で使っています。どうせならネガティブイメージの強い言葉は使いたくないとの思いからです。ともあれ、何の躊躇もなく「手のひら返し」が出来ることは、トレーダーにとっては最高の武器の一つであると確信しています。

 

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