『年収300万円、掃除夫だった僕が7億円貯めた方法』を読んで

多くの投資家がその再販を待ち望んでいた2013年出版の名著の改訂版が出たので、早速読んでみました。

著者のwww9945さんと言えば、その飾らず誠実な人柄で老若男女から絶大な支持を受ける投資家さんですが、本書に掲載されている過去のエピソードの中には、そのお人柄そのままに、そこまで正直に書きますかというレベルのものがあります。たとえばシンキ大車輪。これは一週間無利息の消費者金融ローンをフル活用して得たお金を投資資金に充てるというものですが、多重債務者が綱渡りの資金繰りをするようなもので、一歩間違えたら危険極まりありません。また、信用2階建て投資の失敗により投資資金が一気に半減近くなったり、投資の神と崇める第三者に縋る「アラー投資法(笑)」にハマった時期もあるなど、初心者が大失敗しがちな陥穽に幾度となく陥ってきたことが赤裸々に綴られています。

これだけの実績を積み上げてきた大投資家であっても、決して初めから順風満帆に来たわけではなく、現在の成功に至るまでには人並み以上の失敗と挫折を積み重ねてきたという事実は、投資の未経験者や初心者にとっては励みにもなれば警句にもなるという意味で、大変価値があることでしょう。

本書を一言で表せば、異色の投資家による異色の投資本。よくある長期投資家の本とは明らかに一線を画しており、投資家は勿論、トレーダーにとっても読む価値が非常に大きい本です。なぜならwww9945さんは、地道な努力を重ねることが成果に結びつく投資家的側面の一方で、ピラミッディングを駆使して爆発的な利益を得ることが得意だったり、値動きによって躊躇なく機械的な損切りが出来るといったトレーダー的側面も兼ね備えているからです。

ピラミッディングに関しては、知り得る限り、日本人が書いた投資本の中で最も詳しく、また具体的に記述されています。ナンピンはせずに下がれば(買値から10%という予めルール化した基準を下回ったら)売るといったところも合わせれば「順張りトレーダー」そのものであり、「普通の投資本」に飽き飽きしている向きには非常に刺激的な内容だと言えます。

勿論、www9945さんの最も有名な持ち技は「街角ウォッチ」です。そのホームグラウンドである池袋を街歩きし細かく観察し続けることによって数々のホームランを叩き出してきたことは周知の事実ですし、本書には2013年版にはなかった第7章が加えられ、第4章のメインテーマである「街角ウォッチ」が近年の実例とともに更に深堀りされています。そんな「街角ウォッチ投資法」ですが、その要諦は、街角を「自分の足」で歩き、「自分の目」で見、「自分の耳」で聞き、その上で「自分の頭」で考えて投資対象を発掘するということになるかと思います。軸が自分ではなく他人である「アラー投資法(笑)」とは完全に真逆ですね。

※この本の中で個人的に最も気に入った一節を挙げておきます。

株価は経済の鏡と言われるが、こうして実際に店舗をリサーチしていると、商品だけではなく、店舗にも値札がついているような感覚に襲われる。それを小口で買うのが株だ。自分の目で見て判断したものが株価上昇という形で報われたときは、この上なく嬉しいものなのだ。

www9945著『年収300万円、掃除夫だった僕が7億円貯めた方法』より引用

ところで、池袋のような流行を先取りする繁華街においそれとは通えない辺鄙な場所に住む投資家はどうしたらいいのでしょうか? 実はその答も本書の中にちゃんと書かれてあります。たとえば、仕事を通じてその業界に精通していたからこそ発掘できた銘柄の事例や、お見舞いに行った病院でたまたま見掛けた製品の優位性を見つけて発掘した銘柄の事例等も載っているからです。つまり、街角以外にも、自身の仕事や業界、あるいは偶然訪れた場所等々、あらゆる所に銘柄発掘の機会は転がっているはずなのです。街角に限らず常に意識して身の回りのチャンスを拾い上げようとすること、これなら都市生活者に限らずあらゆる人にとって可能であり、本書は必ずや読者の今後の投資に資することでしょう。

『年収300万円、掃除夫だった僕が7億円貯めた方法』を読んで” に対して2件のコメントがあります。

  1. 隊長 より:

    日経平均は昭和のバブル後最高値超えましたが、新興市場はズタボロです!なにか理由がおるのでしょうか!

    1. 荻窪禅 より:

      構造的な問題として、新興市場の「優等生」はプライム市場に移行するなど「卒業」していきます。更に言えば、そもそも上場ゴールとなってしまう企業も少なくないように、上場基準が緩すぎることも理由として挙げられそうです。

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