人気優待銘柄の罠

日本の投資家にとっては当たり前の存在である株主優待ですが、実は海外ではほとんど見られないものであり、日本独特のユニークな制度であると言っても過言ではありません。そんな株主優待ですが、優待の魅力に釣られて超短期目線で株を買ったものの、権利落ち日に思わぬ暴落となり、茫然自失となった経験を持つ人は少なくないことでしょう。

仮に無配で 1000円の価値があるものを優待として出す銘柄があったとしましょう。この銘柄の場合、優待権利落ちでは理論的には 1000円分(100株単位の銘柄であれば株価が10円)下がることになります。しかしながら、特に非貸借銘柄の場合、実際には 1000円以内の下落で収まることは稀で、何千円も下落するのが珍しくありません。

では、具体的にどれくらい下落してしまうのでしょうか?現在も上場している銘柄を例に出せば色々と差し障りがあるため、すでに上場廃止となった銘柄を例示することにします。下表は、拙著『超実践!順張りスイングトレードの極意』の中で、「半年に一回起こる恒例の大暴落」というタイトルで採り上げたシベール(証券コード:2228)の権利確定日をまたいだ値動きを示すものです。(権利確定日の終値と権利落ち日の始値を比較しています。)

この銘柄はかつてJASDAQに上場しており、名物の「ラスク」が優待としてもらえることで有名でした。その後、業績悪化が顕著になって、2019年に民事再生手続開始および上場廃止となってしまうのですが、上場中の優待権利落ちの値動きは、上記の通り、極めて悲惨なものでした。

若干の補足をしておきます。シベールの優待権利確定日は、毎年2月末と8月末の年2回でした。また、優待品は「ラスクやクッキーなどの焼き菓子の詰め合わせ」であり、最低単元(はじめは1株、100分割を実施した2014年2月26日以降は100株)以上の保有の場合3000円相当が贈呈され、配当は8月期末一括配当で3000円(2017年は1500円、2018年は無配)でした。従って、「優待そのものの影響」を測るためには、配当分のマイナスを考慮に入れる必要があり、その数値を「調整後ギャップ」として、一番右に表示しています。

なお、一目瞭然かとは思いますが、2018年2月だけは殆ど下落しませんでした。その理由は明確で、2018年2月のみは優待が実施されなかったためです。(2017年末に、シベールは2018年から優待を年一回8月のみとすることを発表していました。)従って、2018年2月は例外として除く必要があり、それ以外の合計17回の優待落ちを計算すると、結果はなんと平均でマイナス11700円だったのです。

つまり、シベールの優待を取得するために、仮に権利確定日の引けで買い、権利落ち日の寄りで売ったなら、実質的に8700円も損をすることになりました。そんな不合理な結果を甘んじて受けるくらいなら、12000円払って4人分をシベールから直接購入する方が遥かにマシだったことでしょう。

今やわざわざ過去データを取ってきて計算などせずとも、AIに尋ねれば一発で「その銘柄の優待を取りに行くとどうなるか?」が分かります。超短期目線で一見魅力的な優待に釣られてしまいがちな投資家は、ぜひ事前にそのひと手間を掛けてみることをお勧めします。

¥1,540 (2020/11/19 17:17:47時点 | Amazon調べ)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA