『株で「1日だけ億り人」に2度なった男』を読んで

ここ数年の野球界では、大谷翔平選手の超人的な活躍が野球マンガを遥かに超えているなどと形容されるわけですが、実はトレーダーの世界では、マンガ以上にマンガ的としか言い様がない例がゴロゴロ転がっているものです。その理由ですが、檜舞台で大活躍するためには並外れた才能があった上で子供の頃から積み重ねた膨大な練習量と実戦経験が必要なスポーツとは全く違い、相場に必要なものは多少のお金だけで、それさえあれば誰でも「世界」と戦えてしまうからです。

数十万から短期間で億まで行く例もそれほど珍しいものではなく、具体例は幾らでも挙げることが出来ます。(それなりに経験を積んだ者より、むしろズブの素人がいきなり、というケースの方が多いです)。実際、株ではアベノミクス初期に、また最近では仮想通貨のトレードで、「いきなり億り人」が大勢出現しました。要するに、素晴らしく地合いのよい時期に、ある意味無謀とも言える、経験者ではとても取れないような大きなリスクを取った者が大勝利を収めるのです。換言すれば、スポーツとは全く違い、(無論レアケースではあるものの)多少の軍資金と「運」さえあれば超人的なパフォーマンスを叩き出す可能性があるのが、相場の世界なのです。

すっかり前置きが長くなりましたが、今回紹介したいのは、兄弟ともにトレーダーであるRょーへーさん(以下Rさんと略)とニートレDさん(以下Dさんと略)によるノンフィクションのマンガ本、『株で「1日だけ億り人」に2度なった男』です。複数回「億」を達成しながらその後はほぼ一文無しへと真っ逆さまに転落するというDさんのトレーダーとしての軌跡はまさに、マンガ以上にマンガ的としか言い様がないものです。それが本物のマンガになればつまらないはずもなく、お二人との付き合いも長く予めストーリーをよく知っていた自分でさえ、思わず引き込まれてしまいました。

上へ下へと大変動するハイボラな資産曲線ほど、第三者から見て刺激的でドラマチックなものはありません。(逆にジリジリと着実な右肩上がりとなる資産曲線以上につまらないものはないでしょう。)また、トレーダーとしてはDさんと全く対照的なコツコツトレーダーであるRさんとの対比が描かれているがゆえに、Dさんのジェットコースター的トレード人生がより浮き彫りになっているとも感じました。ちなみに、「あとがき」の中でも説明されていますが、Dさんの過去の実際のトレード記録は、重要な部分が今もGMOクリック証券のトレードアイランドのサイトにはっきりと残されています。あまりにも劇的すぎるパフォーマンスを残した者にはバーチャ疑惑が湧くのも無理はないのですが、このように公式な記録がある以上、疑いの余地は全くありません。

※下記URLは、トレードアイランドのDさんのページです。一番下までスクロールすると、マンガに描かれている2013~2014年当時の記録が見られます。

https://www.click-sec.com/trade/rank_user.html?uid=01c797551fa75279d472dc09736e92d1

ところで、マンガの中のDさんの資産は、何故ジェットコースターさながらの乱高下をし、結果的に栄光と挫折を繰り返すことになったのでしょうか?それはズバリ、ハイレバ集中投資、しかもそのトレード対象の多くは、人気株ゆえ一時的に流動性が高まっているとは言え本来的には流動性に乏しい新興銘柄という「超ハイリスクハイリターントレード」であったからです。それで思い出されるのは、今も現役バリバリで大活躍している有名な投資家やトレーダーにも、駆け出しの頃に限ってはかなり無謀なことをしていた人が非常に多いということです。Dさん以外の知り合いで言えば、たとえばDAIBOUCHOUさんの「信用2階建て」、あるいはwww9945さんの「シンキ大車輪(一週間無利息の消費者ローンをうまく活用した綱渡りの資金繰り)」などがすぐに浮かんできます。

なおマンガは、2015年11月、Dさんが二度目の大転落をするところで終わります。では、果たしてDさんの二度の億達成は「運」のみだったのでしょうか?結論から言えばノーです。何故なら、その後もDさんは紆余曲折ありつつも2023年の今もバリバリの専業トレーダーであり続けており、最終的にはトレーダーにとって何よりも大切な生き残り(相場に居続けること)が達成出来ているからです。それこそ奇跡的な運のよさがあれば、二度の億達成は可能かもしれませんが、やはり本物の実力がなければ専業トレーダーを10年以上も続けることなど到底不可能でしょう。

念のため付言すると、勢いと運に任せてあっという間に大金を得て「勝ち逃げ」してしまうのも素晴らしいことだと考えています。そもそも絶頂時に冷静になるのは凡人には非常に困難なもので、自分には不相応な僥倖であるとの判断のもとスパッと身を引いてしまうのは極めて合理的な行動と言えるからです。とは言え、まさにDさんがそうであるように、相場に専業としてどっぷりと浸かり続けられることは、何よりも相場を愛する者にとっては至上の喜びなのです。

このマンガは、ノウハウや手法を伝えるものではないため、それらを書籍に求める人に対しては勧めたいとは思いません。しかし、非常に手軽かつエンタメ性の高いコンテンツであることは間違いなく、経験の長短にかかわらず株(相場)が持つ魅力、そして魔力を、リアルマネーを賭けることなく疑似体験したい人にとっては打って付けと言えるでしょう。

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