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トレード戦略

「予測」より「対応」

逆張りの場合、統計的にこのあたりまで下がれば底値、あるいは反発の可能性が大ということで、ある程度は「予測」をしているところがあるかもしれません。一方順張りにおいては、上げ始めにせよ下げ始めにせよ、どうもトレンドが転換したらしいという「現状認識」が基本になります。

要するに、順張りのテクニカル指標は上げ(下げ)始めたという客観的な「事実」を示してくれるものに過ぎず、それらが今後の相場の方向性を「予測」してくれるものではないと考えるべきなのです。

当然ながら、相場にトレンドが発生する場合は常に、順張りのテクニカル指標はその兆しを上手く捉えるものであり、そうした成功事例だけに着目すれば「予測があたった」と思う人が出てくるのも無理はありません。反面、ボラティリティブレイクアウトにしてもパラボリックにしても、たとえば長期に渡ってヨコヨコが続くようなトレンドレス相場にあっては、何度も何度もダマシが発生します。そうした機能しない時にばかり焦点を当てて、「予測が当たらないじゃないか」と考える人も出てくることでしょう。

しかし、繰り返しになりますが、順張りのテクニカル指標は「予測」のために使うのではなく、あくまでも「現状」を認識するためのツールとして使うべきです。そして、言葉の定義上当たり前ではありますが、順張りのテクニカル指標がうまく機能している時はトレンドの出ている「上げ(または下げ)相場」と判断し、逆に機能しない時は「ヨコヨコ相場」と判断するべきなのです。

そうして突きつけられた「現実」をきちんと認識した上で、トレンドが出ている相場では自信を持って順張りのポジションを取り、ヨコヨコ相場では無理せずポジションを控えめにしつつ臨機応変に逆張りもする。つまり、現状が「上げ」なのか「下げ」なのかあるいは「ヨコヨコ」なのかという客観的に提示された「情報(現実)」に対し適切に「対応」するのがトレーダーのやるべきことになります。

どんなに相場経験を積んでも予測の精度は本当に上がらないものです。(逆にもし明日の相場の予測がある程度でも正確に出来るのでれば、資金管理に失敗しない限り、その人は必ずや相場で大金持ちになれることでしょう。)今日は全体相場は上がるだろうと思っても逆に行ったり、この銘柄はそろそろ天井だろうと思ったところからすぐに株価が二倍になるようなことは日常茶飯事です。

トレーダーとして、個人的には、遥か昔に予測することは諦めてしまいました。その後はただひたすら、現状から目を逸らすことなく、突きつけられた現実に適切に対応することだけを心掛けてきました。(ただし、その「現実に適切に対応すること」自体十分に難しいことは、言うまでもありませんが。)トレーダーにとっては、「今」がどういう相場で、「今」どこに資金の流れが来ているのか、そしてその判断のもとに「今」どう対応するのかが、何よりも重要なのです。

念の為一点だけ補足しておきたいのは、決して「予測」そのものを否定しているわけではないということです。「予測」より「対応」が重要なのはトレードにおいてであって、投資、とりわけ長期投資においては、企業の長期的な成長性などを「予測」することの重要性がずっと高くなると考えています。長期の見通しなくして長期のポジションなど取れるわけがありませんから。

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トレード戦略

ボラティリティブレイクアウト大賞2020

12月14日発売予定となっていた新刊『超実践!順張りスイングトレードの極意』ですが、本日12日時点で主要書店には配本され、またネット書店で注文したものが到着したとの報告も受け始めました。

さて、新刊の中では、個人的に2019年で最も印象深かったボラティリティブレイクアウトの実例として、3038神戸物産の2019年8月16日のそれを採り上げました。では2020年はどうだったかですが、まだ今年は終わってはいないものの、どうやら3962チェンジで9月28日に発生した下方向へのボラティリティブレイクアウトで決まりとなりそうです。(あいにく9月末時点で原稿をほぼ書き終えていたこともあって、新刊には盛り込めなかったのですが、10月24日開催の四季報INVESTORS勉強会において採り上げたのは言うまでもありません。)

上図は自作のシステムではなく、TradingViewのチャートに新刊の中でも紹介しているKivanc Ozbilgic氏作の SuperTrend というストラテジーを適用させたものです。4月上旬に上方向へのボラティリティブレイクアウトが発生したのち半年弱の間、上げに上げ続けていたチェンジですが、9月28日に突然の長大陰線が現れ、下方向へのボラティリティブレイクアウトが発生します。(このような長大陰線のことを、昔の相場師は「脳天五寸釘」と呼んでいました。)

チェンジは2018年9月にマザーズから東証一部に昇格しましたが、実質的には今もマザーズの代表のような銘柄と言えます。個人的には、チェンジはマザーズの先導株と考えており、その後マザーズの中核銘柄群がどのような動きになるか大いに注目していましたが、10月22日に弁護士ドットコム等々のマザーズの牽引銘柄群が一斉に下方向へのボラティリティブレイクアウトを起こしたのは、当日ツイートした通りです。

10月22日以降現在に至るまで、マザーズ銘柄全体はなかなか上に行けない冴えない展開となり、それまでの「最強指数」としての地位を明け渡すことになってしまいました。その一方で、11月以降、「ワクチン相場」が展開されて日経平均やTOPIXは非常に強い動きとなりましたし、同じ新興市場でもジャスダックはマザーズとは違って比較的堅調に推移してきたのは、皆さんご存知の通りかと思います。

需給の変化、資金の流れの変化というものは、全体相場を大きく動かします。そして勿論、個別銘柄は全体相場の影響を強く受けることになるのです。従って、トレードのパフォーマンスを上げる上では、「よい銘柄」探しばかりに血眼(ちまなこ)になって全体地合の変化を見過ごしてしまうのは大きな問題となってしまいます。新刊の中では、全体相場のトレンド判定や全体地合の読み方について詳述していますので、是非参考にしていただければと思います。

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相場とメンタル

資産曲線がすべて

典型的な損大利小トレーダーは、迅速な損切りが出来ず、日々膨らみ続けるマイナスに耐えきれなくなって初めて損切りに踏み切る決心をするものです。しかし多くの場合、今後の展望も見えないまま含み損銘柄を保有し続けるのは自殺行為であると少なくとも頭では分かっているもので、損切りを躊躇わせるのは単純に心理の問題です。

当然ながら、そのままでいればいつかはマイナスがプラスになって、トレードを無事利食いで終えられる可能性はあります。そして、その可能性が0.1%でもある以上それに掛けてみたいという気持ちは、痛いほど理解できます。しかし、こうしたトレーダーにアドバイスするなら、今後思った通りに動いてくれる可能性が極めて小さいのであれば、より有望な銘柄に乗り換えた方がよいのでは?というものになります。

そもそもトレーダーは何のためにトレードをするのでしょうか? トレードで稼ぎたい(資産を増大させたい)というものが根本にあるはずでしょう。であれば、都度そのための最善手を打ち続けることが最重要ということになります。マイナスが膨らむ一方であるような銘柄に拘るくらいなら、それよりも有望な銘柄は山ほどあるでしょうから、さっさと損切りして乗り換えるべきでしょう。

勝率を高めたいとか、目先の勝敗に拘りたいといった気持ちを全否定するものではありません。しかし、稼ぐこと(資産増大)が最終目的である以上、勝率や目先の勝敗といったものは、遥かに低次の目的であることは認識されるべきでしょう。また、本来あるべき優先順位が真の意味で理解できた暁には、そうした低次の目的に拘る気持ちは一気に薄れていくことでしょう。

複数の証券会社のみならず、銀行、カード会社等々、あらゆる金融機関にある各人の金融資産をひと目で見られるアグリゲーションサービスというものがあります。具体的には、マネーフォワードやマネーツリー等が有名で、証券特化型であれば株iew (カビュウ)が多くのユーザーを集めているわけですが、多くの証券会社を使っているトレーダーであれば、これらを利用することを推奨したいと思います。と言うのも、資産総額の推移(資産曲線)がひと目で分かるようにするためには、アグリゲーションサービスほど便利なものはないからです。

言うまでもないことですが、損切りをしても含み損が確定損に変わるだけで、資産総額が減ることはありません。もっと正確に言えば、確定損となった瞬間、それなりに大きな損切りであったなら多額の税金が戻ってきてむしろ資産が増えることにもなるのです。

含み損を確定損に変えたところで実質的な資産が減ることは決してない。このことさえ理解できれば、精神的ストレスを抱えつつ含み損を膨らまし続けるような愚を犯すことはなくなることでしょう。また逆に、含み損を膨らませるような銘柄を素早く切る習慣が定着したなら、自ずと資産は増えていくことになるのです。

損小利大のためには、決して際限のない含み損増大に目を瞑ってしまうべきではありません。とにかく資産曲線を右肩上がりにしていくこと。これに集中しさえすればよいのです。

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