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売れる投資本の作り方

自著の執筆開始以来、既に約半年間、ずっとどのような投資本の売れ行きがよいかウオッチしています。結論から言うと、基本的にはタイトルや表紙からして如何にも取っ付きやすそうなビギナー向けの本ほど、売れ行きの上位を長い間占め続けているようです。

コロナショック後、自粛や給付金といった特殊事情もあって、例年よりも遥かに多くの人々が投資を開始したという特殊事情は大きい要因でしょう。しかし、そもそも生存確率が決して高くないこの世界では、投資本の読者で最も多数派となるのは常に初心者・初級者であることは間違いなさそうです。

従って、もし販売部数を重視するのであれば、最も想定読者としての層が厚い初心者・初級者を対象にするのが最善手であり、出版社としても当然、そこに最注力することとなります。そして、単に本を多く売るためには、読者に夢を抱かせ、少なくとも実戦に入らない読書中の段階では「自分にも簡単に出来そう」だと思わせるような書き方の方がいいに決まっています。

その意味で、敢えて拙著の「まえがき」の段階で、「何らかの秘訣さえ分かればすぐにでも稼げるといった非現実的な期待をされる方には読んでいただく必要はない」と書いた私は、誠実ではありますがバカ正直に過ぎたかもしれません。しかし、初心者・初級者であっても、逆にそのようなスタンスを理解し真意を汲んでくださった読者の方が多くおられたのは、著者として非常に嬉しいことでした。

念の為、一点だけ書き添えるとすれば、(著者自身にその気はなくとも)出版社の強い意向により、多少なりとも読者に対して非現実な夢を抱かせるような書き方をしている著者もおられるかもしれません。

あまり多くの人が知らない事実として、著者の意向通りのタイトルが付く本は、実際には極めて稀だということがあります。(本を作るだけでなく売るプロでもある出版社側がタイトルを決定することが殆どです。)

そんなわけで、最終的には「売れる本」にするため、タイトルも中身も「読者に夢を見させる」ものにしようとするケースは少なくないはずです。そして、少数の例外を除いて、今後もそうした本がベストセラーとして売れ続けることでしょう。

ここまで読んでいただければ、投資の世界で初心者・初級者を引きつけるにはどうするのがベストかは明らかかと思います。そして、たとえばツイッターでそうした多くのビギナーを引きつけ、短期間で非常に多くの(信者的)フォロワーを獲得するようなアカウントがどのようなものかは、容易に想像がつくことでしょう。

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相場とメンタル

投資家とトレーダー

銘柄A:既に誰の目にも明らかな割高さながら一週間後には高確率で20%程度の上昇が見込めそう。

銘柄B:前から狙っていた割安優良株が急落で更に割安になったが、一週間後に水準訂正が起こる可能性は殆どなさそう。

上記のように対照的な二銘柄があった場合、トレーダータイプであれば間違いなく銘柄Aを買いにいくことでしょう。一方、投資家タイプはどうでしょう? 私自身は紛れもないトレーダータイプなので想像でしかないのですが、恐らく意見は二つに割れるのではないでしょうか? 

短期的な値上がりには興味がなく、あくまでも自らが厳選した優良銘柄で勝負したいという拘りを持つ投資家であれば、銘柄Bを選ぶかも知れません。一方、本質的には長期的な視点からじっくり株を持ちたいと思いつつも「落ちているお金」は積極的に拾いたいため、このケースでは敢えて銘柄Aを選ぶという人もきっといることでしょう。敢えて分類すれば、前者は生粋の(長期)投資家、後者は投資家兼トレーダーといったところでしょうか。

著書『順張りスイングトレードの極意』においては、(重なる部分もあるし明確に区分け出来はしないものの)投資家とトレーダーの二つのタイプがあると書きました。また私自身は、紛れもないトレーダーです。では、株式市場に参加している人々の割合はどうかと言えば、自身が意識しているいないかは別にして、実際には、明確に投資家ともトレーダーとも分けられない投資家兼トレーダータイプの比率が結構高いように見受けられます。

では、結局一体どのタイプがいいのか、あるいは悪いのか? 結論から言えば、どれがいいとか悪いといったことは全くなくて、各人が好きなタイプを目指せばよいのだと、私は心の底から思っています。目の前に落ちているお金をしっかり拾いに行くのは経済合理性に適うことですし、一方で敢えてそうしない(だけの精神的・金銭的余裕がある)のも素晴らしいことだと思えるからです。

たとえば同じトレーダーであっても、場が開いている間は片時たりとも相場から目を離さないというタイプもいれば、ゴールデンタイムである寄り付き直後と引け直前くらいしか取引せず残りの時間帯は殆ど場を見ないというタイプもいます。前者を褒めれば真面目かつ熱心でよいということになるし、後者は後者で時間の使い方が効率的(相場だけに時間を使わず人生を楽しんでいる)といった褒め方も出来るでしょう。

結局のところ、「みんなちがって、みんないい」ということになります。相場への取り組み方は人それぞれでよいのです。そして、全く別の取り組み方をしている人たちを非難したり排撃したりすることはお門違いも甚だしく、絶対にすべきではないと言えるでしょう。

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相場とメンタル

仮想トレードとリアルトレード

プロスポーツ選手のレッスン動画を見たり、あるいはその著書を読んだだけで、そのスポーツをやったことがない素人がその選手と同じレベルのプレイなど出来るわけがないことなど、子供にも分かることかと思います。しかし、なぜか投資やトレードに関しては、何か誰にでも簡単にコピーできてしまう秘密のようなものがあって、それさえ分かれば自分も明日から超一流に進化できるという期待を抱いてしまう者が後を絶ちません。それもいい歳をした大人がです。換言すると、単に傍から見ているだけだとそれほどまでに簡単そうに見えてしまうのが相場の世界のようです。

確かに相場はある程度のお金さえあれば誰にでもすぐに始められるものであり、初期のハードルは極めて低いと言えます。そのため、デモトレードやペーパートレードを多少やって経験を積みさえすれば、すぐにでも実戦で儲けられるようになると錯覚するケースが非常に多いように見受けられます。

しかし、実際にそれを経験した人はよく分かることでしょうが、そうした現実にお金を賭けることがない仮想トレードでたとえいくら沢山稼げたとしても、リアルトレードになり実際に自分のお金が増減するようになった瞬間、難易度は遥かに大きくなります。と言うよりも、同じトレード対象や銘柄であっても、仮想トレードとリアルトレードとでは全く別のゲームであることを痛感させられるはずなのです。

たとえば、どんなにレースゲームやレーシングシュミレーターに上達したと言っても、いきなりレース場で実際にレースに参加して勝てるはずもなく、下手をすれば落命してしまうのがオチでしょう。相場の世界も全く同じです。どんなにバーチャルな売買で驚異的な成績を出したとしても、いやバーチャルで驚異的な成績を出したような者ほど、かえって相場を舐めて掛かるようになってしまい、逆に悲惨な結果を出すことになりやすいと言えるのです。

更に言えば、仮想トレードとリアルトレードの違いはメンタル面のみでは決してありません。たとえば株なら、最低単元の買い注文を入れただけで、アルゴはほぼ確実に反応してきます。その注文に大きな邪魔を入れてきたり、あるいは上の売り板を食って株価を上げてしまうことすらあります。要するに、机上ではうまくいった買いもリアルではそんなに上手く行かないものですし、当然ながら、売る際にも同じことが起こるのです。

仮想トレードについては賛否両論あるかとは思いますが、私は基本的に否定派です。唯一仮想トレードが許されてもよいと考えるのは、いきなりリアルトレードをするのは怖すぎるので多少なりとも練習のためにやるという場合です。そして、あくまでも練習ということであれば、出来るだけ速やかに(少額でもよいので)リアルトレードへと移行して、少しでも多くの実戦経験を積んでいくことを強くお奨めしたいと思います。