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『みきまるの「名著」に学ぶ株式投資』を読んで

みきまるさんの1月23日発売の最新刊、大変光栄なことに拙著『順張りスイングトレードの極意』も採り上げていただいたこともあって、早速興味深く拝読させていただきました。読書中に考えたこと、感じたことを簡単に纏めておくことにします。

まず一番強い印象として残ったのは、自身とは全く異なる手法や考え方を受け入れて血肉にしていくという柔軟な姿勢です。元々みきまるさんは2~3年の中期時間軸での「優待バリュー株投資」で有名な投資家さんですが、この新刊の中では、イベント投資・短期トレード・トレンドフォロー・システムトレード等々、バラエティに富んだ手法や考え方が紹介されています。

最も分かりやすい対比だと「バリュー投資とグロース投資」が挙げられるでしょうが、一般的には、取引対象・手法・時間軸等々の点で自分とは全く異なっている人たちからは学ぶことなど一切ないと考えてしまいがちです。そして必然的に、オフライン・オンラインで交流するのも「似た者同士」だけで固まるということになります。しかし実際には、全く異なる投資(トレード)をしている人たちからも学べることは非常に多いもので、逆に自分で自分の枠を作ってそこに安住してしまうのは実に勿体ないことです。

ちょっと株から離れビジネスでたとえてみますが、A業界で至極当たり前に行われていることがB業界では全く画期的なことであり、それを採り入れたところ抜群に業績を伸ばせたといった例は枚挙に暇がありません。つまり、同じ業界人同士で固まっていては決して見えなかったものが、他業界人との交流によって天啓のごとく眼前に現れたりすることは全く珍しくはないのです。

これは経験上強く感じることですが、ビジネスであれ投資であれ、実力者ほど全く異なる手法や考え方も尊重し吸収しようとするものです。(倫理上問題のあるようなものは当然除きますが。)換言すれば、ある程度力が付いたからと言って決して小さく固まってしまうことなく、目新しいものに対して貪欲、かつそれを上手に取り込める柔軟性があるからこそ、実力者はますます力を付けていくのでしょう。そこで想起されるのが下記の名言です。

賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず。

ビスマルク

裏を返せば、どんな賢者、あるいはどんな実力者であっても、学ぶ(他者から積極的に吸収しようとする)姿勢を失ったら終わり、ということになるのでしょう。

ここで、みきまるさんの言葉を紹介します。

私は以前から、投資家としての究極のやり方は、オポチューニスティック・スタイル(それぞれがプラスの期待リターンをもつと考えられる投資手法や投資対象を、マーケットの変化と共に柔軟に組み合わせていくやり方)であると考えています。

『みきまるの「名著」に学ぶ株式投資』90ページより引用

これには100%同意するほかありません。私が知る限りの凄腕は、大変に柔軟で臨機応変に動ける人たちばかりだからです。引き出しの数自体も多い上に、その引き出しをタイミングよく開けて変幻自在に使いこなしており、またそれであればこそ傑出した実績を残し続けられるということになるわけです。ちなみに、みきまるさんご自身について言えば、近年はトレンドフォロー(モメンタム投資)をどんどん採り入れて益々パワーアップしておられるように見受けられます。

自分自身を振り返ると、昨年は二冊の著書を書き上げるのに集中していたこともあり、インプットが明らかに足りていなかったことを自覚しています。今回の読書を切っ掛けに、今後は改めて貪欲に学び続けなければと自戒しています。

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トレード戦略

「未来」より「現実」

逆張りのシステムトレードのストラテジーを作る場合、基本的には「上がりそうだから買う(統計的にこのあたりが底になるはずだから買い)」といった判断をしているはずです。売りの場合も全く同様で、「下がりそうだから売る(このあたりが天井になるはずだから売り)」という判断になります。)要するに、統計という「過去」に基づいて「未来」を判断しているということになります。

一方、順張りでドテン売買するようなストラテジーを作る場合を考えてみます。トレンドが変わらない限りそのトレンドに乗り続けるという順張りのトレーダーは、基本的に「永遠にこのトレンドが続いて欲しい」と願います。従って、売る場合の判断は、「ここまで下げたらトレンド転換したと見て売らざるを得ない」というものになり、(ショートしていて)買い戻す時の判断も同様に、「ここまで上げたら買わざるを得ない」というものになります。つまり、下げ始めたという「現実」を見て売り、上げ始めたという「現実」を見て買うのです。

未来を「予測」することは楽しいし、ましてその「予測」が当たれば、自分の賢さ・正しさが証明されたようで、非常に気分がよくなることでしょう。一方、上がり(下がり)続けて欲しいという願望に反して、現実を見せつけられそれに仕方なく「対応」させられることは、決して気分のよいものではありません。

迅速に損切りすることは苦痛です。なぜなら、損切りしなければいずれ利食いに変わるという「未来」がやって来る可能性(希望)を捨て去ることになるからです。

一方、(「現実」はトレンドに合致したトレードが出来ているのに)利を伸ばすことも苦痛です。なぜなら、今すぐ利益確定すれば確実に勝ちトレードにしてよい気分になれるのに、利食いを先延ばしすることでいずれ損切りに変わってしまうという「未来」の可能性を受け入れることになるからです。(実は、小さな勝ちを大きな勝ちに出来るという「未来」の可能性も同時に捨てているのですが。)

しかし、大変残念ながら、心理的・本能的にやりやすいことばかりしていると長期的には着実に負けていってしまうのがトレードなのです。(トータルとして)勝ち続けるという最も重要な目的のためには、感情や本能を抑え機械的にトレードすることで、やりやすいことから敢えて徹底的に目を背ける必要があります。「未来」に淡い期待を抱くより「現実」を直視するという習慣を身に付けたいものです。

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システムトレード

“握力”強化のためのシステムトレード

もともと商品先物を盛んにトレードしていたこともあって、今でも様々な商品先物の値動きを常に注視しています。その中でも最重点監視対象となっているのが、世界景気における「炭鉱のカナリア」とされ、Dr. Copperとも称される銅です。

下図は、自作システム上で鈍感なボラティリティブレイクアウトのストラテジーを適用させた、直近15ヶ月間の銅先物のチャート(ドルベース)になります。(上段は14日間のATRPです。)銅は3月8日に下げトレンド入りし、3月22日に大底を付けます。ボラティリティ(ATRP)で見ると、同じく3月22日に最高潮に達した後は緩やかに低下していき、5月18日には上方向にボラティリティブレイクアウト(上げトレンド転換)します。その後はご覧の通り、二度ほど下方向にボラティリティブレイクアウトしますが、何れも翌営業日には再トレンド転換となりダマシであったと判明することになって現在に至ります。そして、これを見る度、株についても、コロナ禍で実体経済がどんなに悪化しようとも安易にショートには走れないという気持ちにさせられたものです。

さて、下図は試みに、銅で用いているストラテジーと全く同じものをジャスダック平均に適用させたものです。コロナショックの暴落中に一度ダマシが出ますが、3月25日に上げトレンド転換した後は、(時期は全く違いますが)銅と全く同じく二度のダマシは出たものの、基本的には上げトレンドを維持し続けてきたことが分かります。

更に、銅で用いているストラテジーを日経225にも適用させてみます。すると、コロナショックの暴落中だけでなくコロナショック後も全くダマシが出ないという結果となりました。これを見れば、もともと銅のために作成したストラテジーながら、日経225用のストラテジーとしても十分に使えそうに思われるほどです。

鋭い方はすぐ気づいたことでしょうが、この自作システムでは、陰線と陽線の区別を敢えてなくしています。すなわち、上げトレンド継続中のローソク足は全て青に、また下げトレンド継続中のそれは全てピンクにしているのです。これには、途中の上げ下げに一々感情を揺さぶられないようにしつつしっかり現状のトレンド判断が出来るという大きなメリットがあるからです。

新刊の28ページでは、「スイングトレーダーが長期投資家になる時」という見出しを付けたわけでが、たとえば鈍感なストラテジーに基づいて売買する場合は、それがトレンド転換を示すまでは必ずホールドし続けることになります。つまり、“握力”強化のためにもシステムトレードは大いに有効であり、上図を見ていただければ、その意味するところが視覚的に容易に理解いただけるかと思います。