上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。

順張りトレードの極意そのものの金言として著書の中でも紹介した下記の言葉について、少し深堀りしてみたいと思います。

上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。一番安いところで買ったり、一番高いところで売れるものだと思うな。

村上勇氏(村上世彰氏の実父)

この言葉を初めて目にして、「頭と尻尾はくれてやれ」という有名な相場格言を想起した人は少なくないことでしょう。確かに、両者は一見したところ、非常に似ているように感じられます。しかし、実は結構大きな違いがあるように私は考えます。

具体的に言えば、「頭と尻尾はくれてやれ」は、欲張ってどん底で買おうなどとせず適当なところで買い、逆に欲張って天井で売ろうなどとせず適当なところで利食いしようという意味で、底や天井など当てるのは難しいから腹八分目で妥協しようという意味であると、私は解釈しています。

一方、「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。」に妥協という考えはありません。底を打って反転するまでは買わない、また天井を付けて反転するまでは売らないことで、トレンドをとことん享受し尽くそうという意味になります。

これが嵌った時の爆発力は言うまでもありません。自らのものさしでもう十分と判断して途中で降りるようなことは絶対にしないため、トレンドが続く限りは利益をいくらでも伸ばすことが可能になるからです。これは正にトレンドフォロー(順張り)の真髄とも言える考え方なのです。

では、英語の相場格言で「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。」と同様のものがなかったかと色々考えていたところ、一ついきなり思い出した言葉がありました。それは、もう20年近くも前に読んだ矢口新氏の名著「生き残りのディーリング」の中で初めて出会った言葉です。

(I am) Always long on the top and always short at the bottom.

(最高値ではいつも買い持ち、最安値ではいつも売り持ち)

この言葉が一体誰のものか調べてみたのですが、結局分かりませんでした。米国のディーラーたちの間で言い伝えられている古諺なのかもしれませんが、何れにしても、表現は違えどその意味するところは、村上勇氏の言葉と全く同じと言えるのではないでしょうか?

実は、私がこの言葉に初めて出会った時には、順張りを得意とするディーラーの矜持を端的に表現した素晴らしい言葉であると感じはしたものの、それこそが正に一言で順張りの極意そのものを表す金言であるとまでは思い至りませんでした。と言うより、その価値を瞬時に理解できるだけの実力が、当時の私には全く備わっていなかったのです。

「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。」という言葉に触れて衝撃を受けた人。実はその人は、順張りの極意を理解できるだけの実力者なのです。

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