仮想トレードとリアルトレード
プロスポーツ選手のレッスン動画を見たり、あるいはその著書を読んだだけで、そのスポーツをやったことがない素人がその選手と同じレベルのプレイなど出来るわけがないことなど、子供にも分かることかと思います。しかし、なぜか投資やトレードに関しては、何か誰にでも簡単にコピーできてしまう秘密のようなものがあって、それさえ分かれば自分も明日から超一流に進化できるという期待を抱いてしまう者が後を絶ちません。それもいい歳をした大人がです。換言すると、単に傍から見ているだけだとそれほどまでに簡単そうに見えてしまうのが相場の世界のようです。
確かに相場はある程度のお金さえあれば誰にでもすぐに始められるものであり、初期のハードルは極めて低いと言えます。そのため、デモトレードやペーパートレードを多少やって経験を積みさえすれば、すぐにでも実戦で儲けられるようになると錯覚するケースが非常に多いように見受けられます。
しかし、実際にそれを経験した人はよく分かることでしょうが、そうした現実にお金を賭けることがない仮想トレードでたとえいくら沢山稼げたとしても、リアルトレードになり実際に自分のお金が増減するようになった瞬間、難易度は遥かに大きくなります。と言うよりも、同じトレード対象や銘柄であっても、仮想トレードとリアルトレードとでは全く別のゲームであることを痛感させられるはずなのです。
たとえば、どんなにレースゲームやレーシングシュミレーターに上達したと言っても、いきなりレース場で実際にレースに参加して勝てるはずもなく、下手をすれば落命してしまうのがオチでしょう。相場の世界も全く同じです。どんなにバーチャルな売買で驚異的な成績を出したとしても、いやバーチャルで驚異的な成績を出したような者ほど、かえって相場を舐めて掛かるようになってしまい、逆に悲惨な結果を出すことになりやすいと言えるのです。
更に言えば、仮想トレードとリアルトレードの違いはメンタル面のみでは決してありません。たとえば株なら、最低単元の買い注文を入れただけで、アルゴはほぼ確実に反応してきます。その注文に大きな邪魔を入れてきたり、あるいは上の売り板を食って株価を上げてしまうことすらあります。要するに、机上ではうまくいった買いもリアルではそんなに上手く行かないものですし、当然ながら、売る際にも同じことが起こるのです。
仮想トレードについては賛否両論あるかとは思いますが、私は基本的に否定派です。唯一仮想トレードが許されてもよいと考えるのは、いきなりリアルトレードをするのは怖すぎるので多少なりとも練習のためにやるという場合です。そして、あくまでも練習ということであれば、出来るだけ速やかに(少額でもよいので)リアルトレードへと移行して、少しでも多くの実戦経験を積んでいくことを強くお奨めしたいと思います。