何をもって全体相場と見るべきか?

今日TOPIXが、1991年以来29年10ヶ月ぶりの高値を取ってきました。更に、TOPIXバリュー指数は、終値ベースで約2年半ぶりに2000の大台を上回ることになりました。今や「全体相場」が強いということに異論を唱える向きはいないでしょう。

しかし、果たして「全体相場」とは何を指すのでしょうか? 東証一部の全銘柄の時価総額を基準時価総額で割って算出するTOPIXは、「全体相場」の温度感を知る上でかなり有用な指数であることは間違いありません。しかし、ひと口にTOPIXと言っても超大型株から超小型株まで幅広いですし、また様々な業種が混在しているわけですから、それらを十把一絡げに見てしまうことで逆に見えにくくなる部分は当然出てきてしまいます。

さて、下図は、TradingViewで下記3つの指数を相対チャートとして表示させたものになります。(2020年11月4日を起点とし、本日までのそれぞれの騰落率を比較しています。)

・青:TOPIXバリュー

・紫:TOPIX(全体)

・黒:TOPIXグロース

最初の3ヶ月弱はほぼ同様の動きをしていたものの、1月末のボトムから急に大きく乖離し始めたのが一目瞭然かと思います。その結果、全期間を通じては、TOPIXバリューが約29%の上昇に対し、TOPIXグロースは半分以下の約13.5%の上昇ということで、両者の勢いが全く違っていたことが明白ですが、これは「このところグロースに対してバリューが圧倒的に優勢であった」という各トレーダーの肌感覚ともきっと整合していることでしょう。

要するに、TOPIX全体を見ていては決して分からない差異が、何らかの基準である程度は細かく分類することにより、全く別物として浮かび上がってくることになるのです。実際に東証は、33の業種別株価指数、また様々な規模別株指数をはじめとして、実に多くの数の株価指数を日々公表しているのですが、それらをこまめにチェックしていない限り、「いま具体的にどこに資金が向かっているのか?」が見えてきません。

念の為に補足しますが、高成長なのに割安、つまりグロースにしてバリューという銘柄も、低成長なのに割高な(グロースでもバリューでもない)銘柄も、現実には一定数存在していることは間違いありません。

ただ、それを言ってしまうと、独自に銘柄を選定した上でそれらの値動きを日々記録していかなければならず、大変な労力が掛かってします。せっかく東証が日々様々な切り分け方で数多くの指数を公表してくれているのです。それらを利用しない手はないでしょう。

ちなみに、TOPIXグロースとTOPIXバリューの振り分けは、実はPBRのみでなされています。定期入替えのタイミングでTOPIX構成銘柄を連結PBRの高低で3つにグループ分けし、PBR上位3分の1をグロース、PBR下位3分の1をバリューに分類しているのです。

ところで、2022年4月4日には、東証の市場改革により、現行の「市場第一部」、「市場第二部」、「マザーズ」、「ジャスダック」の4市場区分が、「プライム」、「スタンダード」、「グロース」の3市場区分へ移行することになっています。これに伴い、早速2022年4月には東証第二部株価指数やジャスダック指数等が、また翌2023年4月にはマザーズ指数等が廃止となることが確定的です。

これまで新興市場の「全体相場」を見る上で大変有用であった代表的指数(二部指数、ジャスダック指数、マザーズ指数)が全て廃止ということになれば、来年以降は必然的に他の指数を見るほかありません。データの継続性という観点からは、今のうちからそういった他の指数もチェックしておいた方がよいでしょう。そして、「全体相場」を見るためにどの指数に着目すべきか考えることは、今や各トレーダーにとって喫緊の課題なのです。

(※追記:2021年3月26日、東証は2022年4月以降もマザーズ指数の算出を続ける案を発表しました。これにより、マザーズ指数は存続し続ける可能性が高くなりました。一方、ジャスダック指数については、廃止の方針に変わりがなさそうです。)

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